なぜ介護サービスを利用しようと思ったのか
父の介護サービスを利用しようと思った一番の理由は、車の運転が心配になったことでした。
あるとき地元の方から、「お父さんの車が対向車線に入っていたよ」と聞きました。
それを聞いてから、このまま父に運転を続けさせるのは危ないから、家族として心配になりました。
また、父は牛舎で過ごすことも多く、父の状態を考えると、そこに一人で置いておくことにも不安がありました。
だからといって、ずっと家で過ごしてもらうとなると、今度は一緒にいる母の負担が大きくなってしまいます。
家族が交代でずっと父についていることもできません。
「父が日中、安全に過ごせる場所が必要だと思い」
そう考えるようになりました。
父の安全も守りたい。
母の負担も少しでも減らしたい。
最初から「デイサービスに通わせよう」と考えていたわけではありません。
月日が経つにつれて家族だけで父を支えていくことが、少しずつ難しくなっていました。
それが、介護サービスの力を借りようと思った大きなきっかけです。
そんな思いから、介護保険の申請へと進んでいきました。
父に介護が必要になったとき、まず行ったのは市役所での介護保険の申請でした。
その後、認定調査員の方が自宅を訪問し、父の身体の状態や普段の生活、家族の介護状況などについて聞き取りを行いました。
そして一次判定、二次判定を経て、父は「要介護2」と認定されました。
認定調査の日、いつもと違う父
認定調査員の方が来た日のことは、今でもよく覚えています。
父に会う少し前に、自宅近くで私から父の性格や普段の様子について話をしてから、自宅を訪問してもらいました。
父は調査員の方に、
「私はまだ学校には行かない」
と話していました。
もちろん学校ではありません。
「学校じゃなくて、リハビリに行ってみようね」
そんなふうに話を進めていきました。
ところが、ここからが少しおかしくなってきます。
調査員の方が、
「これはできますか?」
と聞くと、父は「できる」と答えるんです。
しかも、いつも以上に動きがキビキビしている。
普段はなかなか上がらない足まで、その日に限って上がっていました。
「えっ、いつもと全然違う……」
横で見ていた私は、そんな気持ちでした。
高齢者って不思議ですよね。
普段はゆっくりなのに、家族以外の人がいると一生懸命になって、いつもはあまり動かさない手足まで動かしてしまう。
認知面でも、家族といるときには話がチンプンカンプンになることがあるのに、家族以外の人の前では、いつもよりしっかり受け答えすることもありました。
そんなこんなで認定調査は終了しました。
最初のデイケアは、なかなか続かなかった
介護認定を受けたあと、父はまず病院のデイケアに通うことになりました。
初日は行ってくれました。
でも、次の利用日は行けませんでした。
その後も行けない日が多く、1か月に通えるのは片手で数えられるくらい。2〜5回程度の月もありました。
最初のころは、私たち娘が付き添って一緒に利用することもありました。
でも、私たちにもそれぞれ生活があります。
毎回付き添うことは難しく、行けるときだけ一緒に行くようになりました。
そんなある日、姉が父に聞きました。
「なんで行きたくないの?」
すると父は、
「昔はガタイも大きかったのに……今はこんなに細くなって……って言われた」
と話しました。
他の利用者さんから言われた言葉だったようです。
父は、きっとプライドが傷ついたんだと思います。
私は一瞬、
「誰だって年を取れば体型も変わるし、シワだって増えるよ」
と言いそうになりました。
でも、その言葉は飲み込みました。
もし私がそう言ったことで、本当にデイケアへ行かなくなってしまったら、今度は母の負担が大きくなってしまう。
そう思ったからです。
1年近くたっても、なかなか通えない
そんな状態のまま月日は流れ、もうすぐ1年。
それでも父がデイケアに通えたのは、多い月でも6〜7回ほどでした。
そこで、ケアマネジャーさんに相談しました。
すると、
「新しくオープンしたばかりで、まだ利用者さんも少ないデイサービスがありますよ」
と紹介してもらいました。
まずは体験利用をしてみることにしました。
そこが、父にとても合っていました。
スタッフの方たちが父の気持ちに寄り添いながら関わってくれて、父も少しずつ通えるようになっていきました。
最初は週2日ほど。
それが少しずつ週3日、週4日と増えていきました。
父もそのデイサービスをとても気に入っている様子でした。
スタッフの方たちも気さくな方ばかりで、本当によくしてもらいました。
デイサービスに通って、父の頭にまさかの変化が
父は頭がかなり薄くなっていました。
本人もそれを笑い話にしていて、顔を洗うときに、
「どこまでが顔なのかわからない」
なんて家族に冗談を言うこともありました。
そんな父が、デイサービスでヘッドマッサージをしてもらうようになりました。
そして数か月後。
なんと、父の頭に産毛が生え始めたんです。
父はうれしそうに、
「デイサービスで私の頭を見て、みんな『産毛が生えてきてる』って言って笑うんだよね」
と話していました。
さらに、
「頭をマッサージしてもらって、なんか液を塗ってもらっているから生えてきてる」
と、ちょっと自慢げ。
デイサービスのスタッフさんに聞いてみると、お風呂のあと、午後の活動の時間に育毛剤を使ってヘッドマッサージをしてくれていたそうです。
私が、
「本人、産毛が生えてきたって満足そうに話していますよ」
と伝えると、スタッフさんも、
「そうなんです!産毛が生え始めて、みんなで『よかったねー』って話していたところなんです」
とうれしそうに話してくれました。
ところが、のちに判明したことがあります。
その産毛。
実は、パーキンソン病の薬の副作用によるものだったようです。
でも私は、そのことを父にもデイサービスのスタッフさんにも、ずっと言いませんでした。
父は「マッサージと育毛剤のおかげで髪が生えてきた」と喜んでいる。
スタッフさんたちも一緒になって喜んでくれている。
だったら、それでいいかなって。
嘘も方便。
今振り返っても、そう思っています。
父が通える場所に出会えたこと
最初のデイケアでは、なかなか通うことができなかった父。
「どうしたら行ってくれるんだろう」
家族も悩みました。
でも、場所を変えてみたことで、父に合うデイサービスと出会うことができました。
介護サービスは、ただ利用できればいいというものではなく、本人とその場所との相性もあるんだと思います。
父の気持ちに寄り添い、父が楽しんで通える場所をつくってくれたスタッフの皆さん。
家族だけではできなかったことを、たくさんしてもらいました。
飛新のスタッフの皆さん、父に寄り添ってくださって、本当にありがとうございました。 とても感謝しています。



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