今でも胸の奥に残っている出来事

判断に迷った場面

今でも、ときどき思い出しては
胸の奥に残る出来事があります。

それは、
父に運転免許を返してもらった時のことと、
デイサービスを利用し始めた頃のことが、
ちょうど重なっていた時期の話です。


運転が怪しくなってきた父と、畜産業の現場

当時、父は畜産業をしていて、
私は一緒に牛の世話を手伝っていました。

けれど、
父の車の運転が、明らかに怪しくなってきたんです。

もし事故を起こしたら。
もし人をひいてしまったら。

そう考えると、
もう見て見ぬふりはできませんでした。


「牛は私がやるから」

私は父に、こう言いました。

「牛は私がやるから、
お父さんは家で遊んでいて」

今思えば、
父の居場所を奪ってしまうような言葉だったと思います。

でも、
事故を防ぐためには、
そう言うしかありませんでした。


それでも牛舎に来ていた父

心臓も悪く、
手には振戦のような震えも出ていたのに、
父はゆっくり、ゆっくり歩いて牛舎に来ていました。

それでも来るんです。

牛舎で一人にしておくのが怖くて、
牛の世話をしながら、
父の様子にもずっと気を配っていました。

でも、草刈りに行かなければならない日もあり、
ずっと見守ることはできませんでした。

草刈りを終えて牛舎に戻るたび、
牛舎で倒れていないかと、
ふとした瞬間に頭をよぎり、
いつも心配していました。


デイサービスを利用し始めた頃

ちょうどその頃、
父はデイサービスを利用し始めました。

知らない場所、
知らない人。

父にとっては、
不安だらけの時間だったと思います。

「行った方がいい」と分かっていても、
無理に勧めていいのか。
何度も悩みました。


外の居場所と、失われていく日常

牛舎に行くことも少なくなり、
車の運転もできなくなり、
少しずつ、
父の日常は変わっていきました。

ある日、
父自身も「もう長距離は歩けない」と思ったのか、
だんだん牛舎にも来なくなりました。

その頃から、
はっきり分かるほど、
父の状態は下がっていきました。


父は、どう思っていたんだろう

父はきっと、
「あの娘は、いつも嫌なことばかりする」
そう思っていたかもしれません。

仕事を取り上げられ、
免許も返させられ、
さらにデイサービスに通うようになって。

それでも私は、
免許を返してもらうしかありませんでした。

事故を起こしてしまったら、
もし人や、集団で歩いている子どもたちを
ひいてしまったら、
取り返しがつかないからです。


正解だったかは、今でも分からない

あの時の判断が、
本当に正しかったのか。

もっと違うやり方があったのか。

今でも分かりません。

でも、
あの時の私は、
父と、周りの人の命を守るために、
必死でした。

どうすることもできなかった選択でした。

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